バセドウ病とは
自己免疫疾患の1つで、男性よりも女性に多い病気です。
甲状腺を異物とみなして生産された抗体が甲状腺を刺激し続ける事によって、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、甲状腺機能状亢進状態になります。
↓はバセドウ病とは真逆の橋本病についてです。

甲状腺ホルモンとは
全身の臓器に作用し、代謝を促す働きを持ちます。
自己免疫疾患とは
免疫は、細菌やウイルスなどから体を守るために抗体を作ります。
しかし、何らかの原因で自分自身の体の組織を外敵とみなし、攻撃する抗体が作られてしまう病気です。
『関節リウマチ』や『膠原(こうげん)病』は、よく知られている病名だと思います。
これらも自己免疫疾患の1つです。
原因
原因はハッキリしてませんが、ストレスや過労、出産、喫煙などと関連があるとされています。
また、バセドウ病自体は遺伝しませんが、身内にいるとなりやすい素質になるようです。
症状
寝ていてもマラソンをしている状態だと言われるほど、新陳代謝が活発になります。
- 体温が上がる
- 食欲亢進
- 食べても食べても体重が減る
- 疲れやすい
- 汗をかきやすく暑がり
- 動悸や息切れ、頻脈
- 軟便や下痢
- 手足の震え
- 精神的なイライラや不眠
- 集中力の低下
- むくみ
- 眼球突出
- 甲状腺の腫れ
- 筋肉の麻痺
- 皮膚の痒み
- 月経不順
- 心房細動や心不全
など、さまざまな症状がでます。
また、『コレステロール値の低下』『血糖値、血圧の上昇』『肝機能障害』など、検診でするような簡単な検査でも異常が出ることもあるため、数値と症状が当てはまる方は詳しい検査をしましょう。
検査
基本的に、診察と血液検査です。
診察では、症状を詳しく聞き、甲状腺の大きさを触診にて調べます。
血液検査では、甲状腺ホルモン(FT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の数値を検査し、TSH受容体抗体(TRAb)の陽性陰性反応を検査します。
バセドウ病の場合、甲状腺ホルモン(FT4)が高値、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が低値、TSH受容体抗体(TRAb)が陽性となります。
超音波検査で甲状腺の大きさを正確に調べたり、放射性ヨウ素あるいはテクネシウムの摂取率の検査をすることもあるようです。
治療方法
治療は、抗甲状腺薬、アイソトープ、手術の3つです。
抗甲状腺薬
メルカゾール、チウラジール(プロパジール)の2種類があります。
すぐに効果が出るものではなく、毎日服用することによって採血の数値が正常値になり、症状もなくなってきます。
通常3~4か月で正常になりますが、早い方では1か月で正常になります。
定期的に血液検査をし、数値によって薬を減らしていきます。
内服をやめるタイミング
先に甲状腺ホルモンの数値が正常になり、次第に甲状腺刺激ホルモンの数値も正常になります。
甲状腺刺激ホルモンの数値が正常になったら、中止を考えます。
抗甲状腺薬には、危険な副作用があります。
『無顆粒球症』と言って、白血球を構成している顆粒球(細菌をやっつけて体を守る役割をするもの)が減少し、感染症を起こします。
無顆粒球症になると、38度以上の高熱や水も飲めないほどの喉の痛みがでてきます。
放っておくと命に関わることもあるため、抗甲状腺薬を服用中は定期的に白血球の数値を検査してもらいましょう。
基本的には、服用してから3か月くらいでこの副作用がでます。
その他にも、蕁麻疹や肝機能障害などの副作用があります。
ヨウ化カリウム丸
あまり使用されませんが、こちらは危険な副作用がない薬となります。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料ですが、ヨウ素を多く服用することによって、逆に甲状腺ホルモンの生産が抑えられます。
しかし、長期間服用すると効果がなくなり、逆に甲状腺ホルモンが増えてしまう可能性があります。
抗甲状腺薬で副作用が出た方や、甲状腺の腫れが小さい方は、長期間服用しても効果が持続することもあります。
アイソトープ
放射性ヨウ素のカプセルを服用する治療法です。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料であるため、ヨウ素が甲状腺にとどまり放射線の力で甲状腺ホルモンの生産や分泌が減ります。
欠点は、効果に個人差がかなりあることです。
1回で治まる方もいれば、5回しても治まらない方もいます。
副作用として、甲状腺機能低下症になる可能性があります。
また、眼症状の悪化がみられることもあります。
治療前に抗甲状腺薬の服用を中止する必要があり、甲状腺ホルモンの値が高値になり動悸などの症状が現れる可能性があるため、心疾患がある方や高齢者は注意が必要です。
手術
抗甲状腺薬で副作用が出た方、腫瘍を合併している方、抗甲状腺薬で治りにくい方などは手術を選択することがあります。
まず薬で甲状腺ホルモンを正常にし、甲状腺への血流を少なくしてから手術となります。
手術は、全摘出で術後の甲状腺機能低下を目指すか、甲状腺を少し残して機能正常化を目指すかの2つです。
永久的に甲状腺機能を正常化できるかは確実ではなく、多く残せば再発の可能性があり、少なく残せば機能低下症になる可能性が高くなります。